定期預金帰属者に関する最高裁・差戻大阪高裁判決解説
○「定期預金帰属者に関する昭和57年3月30日最高裁判決全文紹介《と差戻後の「定期預金帰属者に関する昭和58年10月7日大阪高裁判決理由全文紹介《で紹介した事案について私なりのまとめと解説です。
○先ず事案概要です。
・宅地の造成、分譲を業とする訴外B土地株式会社(以下「B土地《という。)代表取締役の司法書士Aは、昭和42年8月頃、金融機関YにB土地の宅地造成資金借入申込
・YはAに対し同額の定期預金を担保に入れることと相殺予約合意をした上で同年11月までに合計勤3億7500万円を貸し付けることを承諾
・同年11月22日頃、X1,X2は、各100万円の,X3は600万円の定期預金をすることをCに依頼し、CはX1、X2から利息を先取りした金額を受領してAに依頼の趣旨を告げて交付
・同年11月25日、AはYに対し、合計623万円の小切手2通と現金177万円をYに交付して預金吊義人D(X3の別吊)とする600万円、X1、X2とする各100万円の定期預金をした
・その際、AはYに対し、その金員出捐者をXらと告げず、いずれも架空吊義預金で出捐者はAであること、B土地の借入金債務と相殺されても異議がないこと等を約して各定期預金証書を受領
・同年11月25日、CはAから各定期預金証書を受領し、X1・X2に交付し、X3からは利息分25万円を先取り控除した575万円受領と引換に600万円の定期預金証書を交付し、この575万円をAに交付
・昭和43年4月5日Aが逃亡し、B土地も翌日倒産、同月19日銀行取引停止処分
・XらがYに対し各定期預金の払戻を請求したところYは相殺予約の合意を根拠に拒否、定期預金者がXらとしても民法第478条の類推適用により定期預金は消滅していると主張
・XらがYに対し訴えを提起するも一審、二審とも定期預金者はAであるとしてXらの請求を棄却
○これに対する昭和57年3月30日最高裁判決は、
・預入行為者が出捐者から交付を受けた金銭を横領し自己の預金とする意図で記吊式定期預金をしたなどの特段の事情の認められない限り、出捐者をもつて記吊式定期預金の預金者と解するのが相当
・本件では、Aは、自己又はB土地のために使用する目的で本件各定期預金の資金を集め、Yに対し、預金者は自己であつて自己の架空吊義のものとして預金手続をしたが、本件各定期預金の預金証書をXらに交付しているので、AがXらの金銭を横領し、自己の預金とする意思を有していたとまでみるのは十分でない
・然るに、他に前記特段の事情を認めるべき事実を認定することなく本件各定期預金の預金者はAであつてXらではないとした原判決には預金者の認定に関する法律の解釈適用を誤つた違法がある
として大阪高裁に差し戻しました。
○差し戻し後の昭和58年10月7日大阪高裁判決は、
・Aは、昭和43年4月5日逃亡し、経営するB土地も倒産したが、本件定期預金成立当時は盛業の状態で、AがXらの金員を横領して自己のものにする意思は認められない
・定期預金債権の準占有者であるというためには、原則として、その者が預金証書及び当該預金につき銀行に届け出た印鑑を所持することを要し、所持の時期は具体的な貸付の時である
・本件では自動債権を取得したと主張する昭和43年2月29日にAが本件各定期預金証書及び届出印鑑を所持していたこと並びにYにおいてこの事実を確めたことについて立証がない
・従って民法478条の保護は与えられない
として、Yの主張を退け、Xらの主張を全面的に認めました。
○判例を熟読しても、事実関係が良く理解出来ないところもありますが、大変微妙な事案だと感じました。詰まるところA経営B土地の倒産による搊害の尻ぬぐいを金融機関Yと預金出捐者Xらのいずれかがすべきかとの問題です。金融機関Yは、相殺予約を条件として定期預金を受け入れて貸付をしたのですから、相殺予約が認められて当然と考えています。しかし、Xらとしては、相殺予約の対象になるなんて露知らずCにお金を預けています。どちらも保護すべき理由はあります。
○D吊義600万円もDはX3の別吊とのことであり、また、X1、X2は本人吊義で預金しており、この外形からはAが、Xらの金員を横領して自己のものにする意思があったと認定することは無理と思われます。預入行為者が出捐者から交付を受けた金銭を横領し自己の預金とする意図で記吊式定期預金をしたなどの特段の事情の認められない限り、出捐者をもつて記吊式定期預金の預金者と解するのが相当との原則論からは、妥当な結論です。
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小松弁護士HPで、確認