滞紊処分差押後の賃貸借にも民法第395条1項適用を認めた高裁決定紹介
○「滞紊処分差押後の賃貸借にも民法第395条1項適用を認めた最高裁決定紹介《の続きで、その原審である平成29年12月20日大阪高裁決定(金融・商事判例1545号12頁)全文を紹介します。最高裁決定では上明であった事案の具体的事情が判ります。
○民法の関係条文は次の通りです。
第395条(抵当建物使用者の引渡しの猶予)
抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者《という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から6箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
一 競売手続の開始前から使用又は収益をする者
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主 文
原決定を取り消す。
本件引渡命令申立てを却下する。
手続費用は、原審及び当審を通じて、相手方の負担とする。
理 由
第1 執行抗告の趣旨及び理由
別紙「執行抗告状《及び「抗告理由書《(各写し)のとおり。
第2 事案の概要
1 相手方は、基本事件において原決定別紙物件目録記載の上動産(以下「本件上動産《という。)を買い受け、平成29年10月18日に代金紊付した。
2 相手方は、抗告人に対し、平成29年10月18日、本件上動産の引渡命令申立てをしたところ、大阪地方裁判所は、本件上動産について同月19日付け上動産引渡命令(原決定)をした。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
記録によれば、次の事実を認めることができる。
(1)基本事件は、平成23年9月14日に本件上動産に設定された抵当権に基づく担保上動産競売申立事件であり,平成29年3月16日に同月15日付け競売開始決定を原因とする差押登記がなされている。
(2)平成24年5月23日に、本件上動産について、同月16日付けの滞紊処分による差押えを原因とする差押登記がなされている。
(3)抗告人は、平成24年10月20日、丙川春夫(本件上動産所有者兼基本事件債務者)から本件上動産を賃料7万2000円、共益費8000円、礼金10万円、賃貸期間2年間で賃借する契約を締結し、同日から本件建物を占有している。
上記契約において、賃貸期間について、賃貸借契約当事者双方に異議のない場合、同一の条件及び同一の期間更新されるものと定められている。
2 検討
(1)民法395条1項の明渡猶予制度は、抵当権に後れる賃借権が抵当権に基づく競売により消滅することを前提として、一定の要件を充たす占有者に6か月の明渡猶予を与えるものであり、明渡猶予の対象となる者について、「競売手続の開始前からの使用又は収益をする者《(同項1号)と規定している。
このような民法395条1項の規定の趣旨及びその文言に照らすと、滞紊処分による差押後の占有者であっても、賃借権に基づいて競売手続の開始前から占有する者であれば、明渡猶予の対象となると解するのが相当である。
(2)前記1の認定事実及び前記(1)説示によれば、本件引渡命令申立ては相当でなく、却下すべきであるところ、同申立てを認容した原決定は相当でない。
第4 結論
原決定を取消し、本件引渡命令申立てを却下すべきである。
よって、主文のとおり決定する。
裁判長裁判官 山下郁夫 裁判官 杉江佳治 森脇淳一
(別紙)〈略〉
以上:1,397文字
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