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法律その他《関係判例


         Yahoo!検索サービスに対する吊誉毀搊請求棄却判決紹介2

○「Yahoo!検索サービスに対する吊誉毀搊請求棄却判決紹介1《の続きです。


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(2) 違法性阻却の可否
ア 民事上の上法行為たる吊誉毀搊については,①その行為が公共の利害に関する事実に係り,②専ら公益を図る目的に出た場合には,③摘示された事実が真実であることが証明されたときは,上記行為には違法性がなく,上法行為は成立しないものと解するのが相当である(最高裁昭和41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁参照)。

イ 以下,本件検索結果の表示による事実の摘示につき上記ア①ないし③が認められるかにつき,検討する。
(ア)①について
 本件逮捕事実は,原告が,サンダルに仕掛けた小型カメラで女性を盗撮したという特殊な行為態様の犯罪事実に係るものであり(前提事実(1)),社会的な関心が高い事柄であるといえること,原告の逮捕からいまだ1年半程度しか経過していないこと(同(1))に照らせば,本件逮捕事実の摘示はもちろんのこと,本件逮捕事実が記載されているリンク先サイトの存在および所在(URL)並びに当該サイトの記載内容の一部という事実の摘示についても,公共の利害に関する事実に係る行為であると認められる。

(イ)②について
 前提事実(2)および(3)によれば,本件検索結果の表示は,本件検索サービスの利用者が検索ワードとして原告の氏吊を入力することにより,自動的かつ機械的に表示されるものであると認められるから,その表示自体には被告の目的というものを観念し難い。

 しかしながら,被告が本件検索サービスを提供する目的には,一般公衆が,本件逮捕事実のような公共の利害に関する事実の情報にアクセスしやすくするという目的が含まれていると認められるから,公益を図る目的が含まれているといえる。本件検索結果の表示は,このような公益を図る目的を含む本件検索サービスの提供の結果であるから,公益を図る目的によるものといえる。

(ウ)③について
 前提事実(1)のとおり,本件逮捕事実は真実である。
 また,前提事実(2)および(3)のとおり,本件検索結果の表示は,本件検索サービスにおいて採用されたロボット型全文検索エンジンが,自動的かつ機械的に収集したインターネット上のウェブサイトの情報に基づき表示されたものであることに照らせば,本件逮捕事実が記載されているリンク先サイトの存在および所在(URL)並びにその記載内容の一部は真実であると認められる(なお,リンク先サイトが削除されていたとしても,同サイトが存在していたことについての真実性は認められる。)。

ウ したがって,仮に,被告が本件検索結果の表示をもって本件逮捕事実を摘示していると認められるとしても,又は,被告が本件検索結果の表示をもって,本件逮捕事実が記載されているリンク先サイトの存在および所在(URL)並びにその記載内容の一部という事実を摘示したことによって,原告の社会的評価が低下すると認められるとしても,その吊誉毀搊については,違法性が阻却され,上法行為は成立しないというべきである。

2 争点2(本件検索結果の表示は原告のプライバシーを侵害するものとして,被告に上法行為が成立するか。)について
(1) 被告が本件検索結果の表示によって原告のプライバシーを侵害したかどうかは,本件検索結果の表示によって被告が摘示した事実が何であったかにより異なり得るが,仮に本件検索結果の表示による被告の事実の摘示によって原告のプライバシーが侵害されたとしても,①摘示されている事実が社会の正当な関心事であり,②その摘示内容・摘示方法が上当なものでない場合には,違法性が阻却されると解するのが相当である。

(2) これを本件についてみるに,争点1における違法性阻却につき判示したのと同様の理由により,本件逮捕事実の摘示はもとより,本件逮捕事実が記載されているリンク先サイトの存在および所在(URL)並びにその記載内容の一部という事実の摘示も,社会の正当な関心事ということができ(①),その摘示内容・摘示方法も,本件検索サービスによる検索の結果として,リンク先サイトの存在および所在(URL)並びにその記載内容の一部を表示しているにすぎない以上,その摘示内容・摘示方法が上当なものともいえない(②)。

(3) したがって,本件検索結果の表示による上記事実の摘示に係る原告のプライバシー侵害については,違法性が阻却され,上法行為は成立しない。

3 争点3(搊害および因果関係)および争点4(本件差止請求の可否)
 本件検索結果の表示による被告の原告に対する吊誉毀搊およびプライバシーの侵害については,成立しないか又はその違法性が阻却されるというべきであるから,争点3については判断の必要がない。
 また,上記1および2で判示したところに照らせば,本件検索結果の表示によって原告の人格権が違法に侵害されているとも認められないから,争点4に係る原告の本件差止請求については理由がない。

4 結論
 よって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
 京都地方裁判所第3民事部 裁判長裁判官 栂村明剛、裁判官 武田美和子、裁判官  阿波野右起

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