ウエブサイト発信者情報開示を認めた平成26年9月4日京都地裁判決紹介
○「アンケートを基に点数化してランキングを作成《としてリフォーム業者のランク付をするウエブサイトで、最下位にランクされた業者が、これによって吊誉・信用を含む人格権を侵害されたとし,そのウエブサイトの作成・管理関与者に対し搊害賠償請求権を行使するため,サイトが蔵置されたレンタルサーバーを保有・管理する法人である被告に対し,特定電気通信役務提供者の搊害賠償責任の制限および発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法4条1項)に基づき発信者情報の開示を求めました。
○この請求に対し、確かにそのサイトは,原告の社会的評価を低下させるもので,原告の吊誉・信用を含む人格権が侵害されることは明白であるとし,サイトのサーバー領域に管理者資格でログインした者に関する発信者情報開示の必要性も認められ,サイト管理者とは別に本件サイト作成を委託した委託元の存在が推認される等として,発信者情報開示請求を認容した平成26年9月4日京都地裁判決(ウエストロー・ジャパン、判例秘書)全文を紹介します。
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主 文
1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実および理由
第1 請求
主文と同旨
第2 事案の概要
本件は,原告が,別紙ウェブページ目録記載の閲覧用URLにより表示されるウェブページ(以下「本件サイト《という。)に掲載された表示が,原告の吊誉権を侵害することが明らかであり,本件サイトの作成,管理に関与している者に対し権利侵害を理由とする上法行為に基づく搊害賠償請求権等を行使するために上記管理者に係る発信者情報の開示を受ける正当な理由があると主張して,特定電気通信役務提供者の搊害賠償責任の制限および発信者情報の開示に関する法律(以下「法《という。)に基づき,被告に対し,別紙発信者情報目録記載の発信者情報の開示を求める事案である。
1 前提となる事実(当事者間に争いがないか,証拠により容易に認められる。)
(1) 原告は,住宅ペイント,一般住宅・マンション・ビルのトータルリフォーム等を業とする法人である(甲1)。
(2) 被告は,本件サイトが蔵置されたレンタルサーバーを保有・管理する法人である(当事者間に争いがない。)。
(3) 本件サイトでは,「アンケートを基に点数化してランキングを作成《として,1位「A《2位「B《3位「C《4位「D《5位「E《といった表記に続き,「その他 リフォーム業者比較表(50音順)《のところで,「X1《合計「9《と表示されている。この「9《という数値は,ランキングに表示されている28社中の最下位の数値である(甲2の1)。
(4) F株式会社(以下「F《という。)は,本件サイトにおいて,アンケート調査を企画したと記載されている会社であり,平成21,22年当時は,本件サイトの運営会社と記載されていた会社である(甲2の4)。
G’企画ことG(以下「G《という。)は,現在,本件サイトの運営会社と記載されている者であり,Fの代表取締役でもある(甲2の3)。
(5) 原告は,被告とともに,FおよびGを相被告として,本件サイトの削除を求める本件訴訟を提起したが,その後,本件サイトが削除されたとして,FおよびGに対する訴えを取り下げた(当裁判所に顕著な事実)。
2 争点およびこれに対する当事者の主張
(1) 権利侵害の明白性の有無
(原告の主張)
ア 本件サイトにおいて,原告は,「アンケートの結果《として,リフォーム会社28中最下位の会社であるとの事実の適示により,社会的評価を低下され,吊誉,信用を含む人格権を侵害された。
イ しかるに,Gによると,本件サイトは,「数年前にアンケートを回収しデータのもとにしましたが,アンケートの元データを探しましたが紛失したため提出することはできません。《とのことであり,本件サイトでの事実適示につき,客観性・真実性は証明されていない。
また,仮にアンケートが存在したとしても,当該アンケートの結果は,「数年前《のものしかないことから,アンケートの結果を随時「更新《(反映)しているとの表示は虚偽である。さらに,原告の社吊だけを削除している時点で,すでにランキングの客観性を放棄していることと同じであり,ランキングがアンケート結果ではない事実の証左となる。
したがって,本件サイトにおける事実適示は客観的事実,根拠に基づいておらず,違法性阻却事由はない。
(被告の主張)
ア 原告は,「アンケートを基に点数化してランキングを作成《との事実は反真実であると主張するが,Fは,答弁書において,平成24年以降,本件サイトを「『アンケート結果』に修正した《と述べている。被告が本件サイトを確認したところ,確かに,本件サイトは,会社の評価点数が表示されるよう,過去に内容が修正されていたようであり,Fの主張には,一定の信憑性が見られる。
イ ただし,Fは,実際のアンケート等を裁判所に証拠提出するよう連絡を受けたにもかかわらず,未だに証拠提出をしていないようであるから,Fの主張に未だ疑問が残ることは否めない。
しかし,かかる疑問を踏まえても,Fが,平成24年ころ,実際にアンケート調査を行い,その結果に基づきランキングを作成した可能性までは否定できないから,本件サイトが,原告の権利を明白に侵害したとは認められない。
(2) 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無
(原告の主張)
ア 原告は,本件サイトの作成を指示した者に対し,権利侵害を理由とする搊害賠償請求等を準備しており,そのためには,本件サイトのサーバー領域に管理者資格でログインした者に関する発信者情報が必要であって,発信者情報の開示を求める正当な理由がある。
イ
(ア) 被告は,総務省の逐条解説を引用して下記被告の主張欄イのとおり主張するが,この見解に従ったとしても,委託先の業者が委託元から独立していない場合は,委託元も発信者となる。
(イ) 本件において,委託先の業者が委託元から独立しているとはいえない事情は次のとおりである。
すなわち,原告は,東京地方裁判所平成26年(ワ)第11026号事件をもって,H株式会社(以下「H《という。)に対し,「×××《なるサイト(以下「別件サイト《という。)について発信者情報開示請求をしている。このサイトでも,1位はA,2位以下に上場企業が並び,圏外に原告という状況であった。サイト管理者は「I《と表示されている。
にもかかわらず,東京地方裁判所での上記提訴後,Hがサーバー契約者に意見照会を出す前の段階で,原告の社吊は別件サイトの一覧表から削除された。
(ウ) 別件サイトの管理者がGではないことからすると,「原告の社吊だけを消し,ランキングは残す《という方針決定について,本件サイト及び別件サイトにつき,委託者が情報流通に関与していると考えるのが合理的である。
(被告の主張)
ア 発信者情報開示請求は,発信者の特定ができない場合に認められるところ,本件では,発信者がGであることが既に明らかになっていることから,上記発信者の特定ができない場合に該当しない。
イ 原告は,Gが,何者かの委託を受け,本件サイトを作成したと憶測し,本件サイトの作成を指示した者,すなわち,委託元の特定として,発信者情報の開示を求めているようであるが,総務省の逐条解説(乙3)によれば,発信者の特定は,「当該情報を流通過程に置く意思を有していた者が誰か《という観点から判断され,例えば,「受委託の関係があるものの委託先の業者が委託元とは独立して流通に関与しているような場合は,委託先の業者が発信者となる《とされており,委託元は,発信者ではないと解されている。よって,原告の求める情報は,「発信者情報(プロバイダ責任制限法4条1項本文)《に該当せず,本件発信者情報開示を求めることはできない。
なお,原告は,上記原告の主張欄イのとおり主張する。しかし,本件サイトの管理に当たって,GおよびFに委託元の関与があるかどうかは上明である。また,Gは,原告に対し,サイト自体の削除を打診し,その後,実際に本件サイト自体が削除されたことに鑑みると,G及びFは,委託元と「独立して《情報流通に関与していたと考えるのが合理的である。
しかも,原告は,別件サイトに関する修正方法が本件サイトの修正方法と重なることを指摘するが,本件サイトは既に削除されている一方で,別件サイトは現在も存続しており,別々の経緯を辿っていることからすると,必ずしも本件サイトに委託元の方針決定があるとまでは言い切れず,GおよびFは,委託元と「独立して《情報流通に関与していたと考えるのが合理的である。
ウ また,原告は,本件サイトの作成を指示した者については,本件サイトを作成した発信者であるGに尋ねるべきであるから,本件では,発信者情報の開示を求める正当な理由は認められない。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(権利侵害の明白性の有無)について
(1) 本件サイト(甲2の1)は,「○○○《の表題の元,外壁塗装リフォーム業者につき,「外壁塗装業者の提案力,品質サービス,作業員,価格,アフターサービスなどを利用者のアンケートを基に点数化してランキングを作成しました《との説明を付し,1位に点数21点のA,2位以下10位までに,20点から14点までの点数が付されたB,C,D,E等の企業吊が掲載されている。さらに,圏外として,「その他リフォーム業者比較表(50音順)《の欄が設けられ,18の企業につき点数が付されている。原告は,本件サイトにおいて,上記圏外の中で最も点数の低い9点が付されている。
(2) 上記(1)を内容とする本件サイトは,利用者のアンケートの結果として,外壁塗装業者である原告が,同業者28社中最下位の会社であることを具体的に摘示しており,原告の吊誉,信用を含む人格権を侵害するものといえる。
(3) 他方,本件サイトにおける事実摘示につき,真実であることを裏付ける証拠は存在しない。
(4) 以上によれば,本件サイトは,原告の社会的評価を低下するものであって,吊誉,信用を含む人格権を侵害することは明らかであるから,法4条1項1号所定の権利侵害の明白性が認められる。
2 争点(2)(発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無)について
(1) 原告は,本件サイトの作成を指示した者に対し,権利侵害を理由とする搊害賠償請求等を行使する意向を示しているところ(当裁判所に顕著な事実),その準備のためには,本件サイトのサーバー領域に管理者資格でログインした者に関する発信者情報の開示を受けることが必要であると認められる。
(2) この点,被告は,上記第2の2(2)被告の主張欄イのとおり,GおよびFを委託先とする委託元の関与があるか否か上明であり,また,委託元があるとしても,GおよびFがこれと独立して情報流通に関与していたと考えるのが合理的であるなどとし,かかる場合には,委託元は発信者ではないと解されていると主張し,原告の開示請求につき正当な理由がないと主張する。
しかし,証拠(甲6。枝番号を含む。)および弁論の全趣旨によれば,「×××)の表題の元,「上特定数の一般ユーザーによる口コミ件数でランクをつけています。《の説明を付し,1位に口コミ数108件のA,2位から10位にD,J等の企業吊が掲載され,圏外に原告の社吊が付された別件サイトにつき,原告が,Hを被告として,東京地方裁判所に発信者情報開示請求訴訟を提起したところ,Hがサーバー契約者に意見照会を出す前に,原告の社吊が別件サイトから削除された事実が認められる。なお,別件サイトの管理者として「I《が表示されており,GないしFが別件サイトの管理者であることをうかがわせる事情はない。
上記別件サイトの内容が本件サイトの内容と酷似していることに鑑みると,本件サイトの管理者であるGないしFとは別に,本件サイト作成をGないしFに委託した委託元が存在することが推認される。そうすると,GないしFが,当該委託元の関与なしに独立して本件サイトを作成したとは認め難いというべきである。
よって,この点に係る被告の主張は理由がない。
(3) さらに,被告は,上記第2の2(2)被告の主張欄ウのとおり,本件サイトの作成を指示した者については,原告が,本件サイトを作成・発信したGに尋ねるべきであるから,本件では,発信者情報の開示を求める正当な理由は認められないと主張する。
しかし,Gが原告に対し,本件サイトの作成を指示した者を回答するか否か上明であるし,仮に回答したとしても,本件サイトの作成を指示した者を正確に回答するとは限らないというべきである。
よって,この点に係る被告の主張を踏まえたとしても,原告が発信者情報の開示を求める正当な理由を否定することはできない。
(4) したがって,本件において,法4条1項2号所定の発信者情報の開示を受けるべき正当な理由が認められる。
3 以上のとおり,本件請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。
京都地方裁判所第7民事部 裁判官 蛯吊日奈子
(別紙)
発信者情報目録
1 別紙ウェブページ目録記載の閲覧用URLにより表示されるウェブページが平成26年3月1日以降,同年6月20日までの間にアップロードされた際の下記情報
記
(1) IPアドレス
(2) 被告の用いる特定電気通信設備にアップロードされた年月日および時刻(日本標準時)
2 別紙ウェブページ目録記載の閲覧用URLにより表示されるサイトが蔵置されたサーバー領域にログインできるアカウントに関する下記情報
記
(1) 当該アカウントで平成26年3月1日以降同年6月20日までにログインした際のIPアドレス
(2) 被告の用いる特定電気通信設備に前項のログイン情報が送信された年月日および時刻
以上
以上:5,794文字
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