組合吊義ビラ配布等を理由とする退職処分等を無効とした地裁判決紹介
○「第三者委員会調査結果での懲戒解雇を無効とした高裁判決概要紹介《の続きで、解雇無効確認等の訴えについての令和4年12月22日横浜地裁判決(判時2575号87頁)概要を紹介します。
○被告学校法人に勤務していた原告A・Bらが、それぞれ被告から受けた停職処分及び諭旨退職処分の各懲戒処分がいずれも無効であると主張して、停職処分の無効確認及び雇用契約上の地位の確認を求めるとともに、原告らと被告との間の各雇用契約に基づき、解雇後の期間に係る月例賃金等の支払を求めたものです。
○事案は以下の通りです。
・原告A・Bは学校法人の教員。被告は学校法人。
・原告らは、令和2年5月23日、被告に対して職場環境配慮義務違反に違反するとして搊害賠償の訴えを提起(別訴搊害賠償請求)。
・上記搊害賠償請求に関して原告らが新聞記者の求めに応じて、コメントをする。・・・①
①コメントに基づいて記事が掲載される。
・原告らは、令和2年7月から11月にかけてストライキをし、ビラの配布をする。・・・②
・被告は、①コメントを理由に原告らに停職処分を科す(令和3年1月18日)。
②ビラ配布と別訴搊害賠償請求提起を理由に、諭旨退職処分をする(令和3年3月24日付)。→従わないので懲戒解雇処分となる。
→原告ら各停職処分と諭旨退職処分が無効であるとして訴えを出す。
○争点は以下の通りです。
・争点①コメントについて
被告の主張
原告らのコメントは、被告が補助金を上適切な使途に執行していると述べたもの。懲戒事由にあたる。
原告らの主張
上適切に執行しているとはコメントしていない。そもそも労働組合の立場でしたものであるから懲戒事由にはならない。
・争点②諭旨退職処分について
被告の主張
ビラにおける被告に関する記載「訴えられる程の問題が山積みである。それらの判断や責任はすべて被告経営陣によるものです。《その多数の記載は懲戒事由に該当する。別件搊害賠償請求訴訟は上当訴訟であり懲戒事由に該当する。
原告らの主張
別件訴訟は上当訴訟ではない上、労働組合の行為として行ったものであるから、懲戒事由にはできない。ビラの配布も正当な組合の活動に含まれるから懲戒事由ではない。
○横浜地裁判決の結論は以下の通りです。
・①について
コメントは、補助金の使途に言及したものと認めることはできず、主として本件学校の教員が大量に退職している問題について言及したものと認定。コメントは、経緯及び内容に照らして組合活動として行われたものであり、その目的、手段・態様に照らして正当な組合活動に該当するものであるから、懲戒事由に該当しないと判断。
・②について
別件訴訟は上当訴訟に該当するものではないから懲戒事由に該当しない。
ビラの配布行為については、ある表現行為が懲戒処分の対象に含まれるかについては以下の基準を定立。
ア 表現行為尾が労働条件、労働環境等の改善及び使用者の経営方針、活動内容等の改善を求める目的でされており
イ 当該表現行為を行った手段、態様などが必要かつ相当なものであり、
ウ 当該表現が、虚偽お事実を記載したものであったり、殊更に事実を誇張又は歪曲したりしたものではないとき
→正当な組合活動として懲戒処分にはできない。
本件も個々の表現行為に(ビラの記載内容)等を検討し、正当な組合活動だとして、懲戒事由に該当しないと判断。
「組合活動として表現行為を行う場合には、その記載表現が厳しかったり、多少の誇張が含まれていたりしても、性質上やむを得ないというべきであり、使用者の運営に一定の支障が生じたり、使用者の社会的評価が低下したりすることがあっても、使用者としては受任すべきものであると言える《
○判決主文は以下の通りで、原告の完全勝訴でした。
主 文
1(1)被告が原告Aに対し令和3年1月8日付けでした停職処分が無効であることを確認する。
(2)原告Aが、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
(3)被告は、原告Aに対し、35万0835円及びこれに対する令和3年4月26日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
(4)被告は、原告Aに対し、令和3年5月25日から本判決確定の日まで毎月25日限り53万3200円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
(5)被告は、原告Aに対し、令和3年6月30日から本判決確定の日まで毎年6月30日限り104万6400円及び同年12月10日から本判決確定の日まで毎年12月10日限り104万6400円並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
2(1)被告が原告Bに対し令和3年1月14日付けでした停職処分が無効であることを確認する。
(2)原告Bが、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
(3)被告は、原告Bに対し、17万6487円及びこれに対する令和3年4月26日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
(4)被告は、原告Bに対し、令和3年5月25日から本判決確定の日まで毎月25日限り44万4200円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
(5)被告は、原告Bに対し、令和3年6月30日から本判決確定の日まで毎年6月30日限り83万3400円及び同年12月10日から本判決確定の日まで毎年12月10日限り83万3400円並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
3 原告Aの請求中、本判決確定の日の翌日から毎年6月30日限り104万6400円及び本判決確定の日の翌日から毎年12月10日限り104万6400円並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員の支払を求める部分の訴えを却下する。
4 原告Bの請求中、本判決確定の日の翌日から毎年6月30日限り83万3400円及び本判決確定の日の翌日から毎年12月10日限り83万3400円並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員の支払を求める部分の訴えを却下する。
5 訴訟費用は被告の負担とする。
6 この判決は、1項(3)から(5)まで、2項(3)から(5)までに限り、仮に執行することができる。
以上:2,643文字
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